きっかけなんてちっぽけで、些細なものだ。
人が人をスキになる事は簡単でたやすい。




「あのっ!はたけ上忍!!私・・・私、はたけ上忍が好きなんです。」


話があるから聞いて欲しいというその女は下を向いていて、耳まで真っ赤になっている。
という事は下を向いて見えない顔は相当真っ赤なのだろう。


「それって、用はオレと付き合いたいとかそーいうこと?」
だったら答えは最初から決まってる。

「あ、・・・はい。ダメですか?私こんなですけど、どうしても・・・はたけ上忍が好きなんです。」


ごめーんね。

必死に告白してくれても、オレは・・・誰とも付き合う気はない、とはっきり告げるつもりだった。
そうだ、オレはもう誰かを愛するのはヤメたんだ。


なのに・・・なのに


「・・・いーよ。」


そう言ってしまったのは、ふとあげた顔に違う誰かを重ねていて。
今日が偶然あの日だったから。



「あ、・・・ホントにいいんですか?」


違う

チガウ。

この子はあいつじゃない。
承諾した言葉を取り消したいのに、否定の言葉が喉につまって口から出てこない。



「オレと付き合いたいんでしょ?」



オレはもう誰もスキにならない。




誰も愛したりしないんだ。




「はい・・・あの、どうして・・・?」


そう誓ったのに。
なのになぜ?


「君、名前は?」


それはここが・・・慰霊碑の前だから。


「私、上忍のと言います。」


あいつがオレの所に戻ってきたのだと・・・
そう思いこんでしまえばいっそラクなのに。

五感は、記憶は、あいつじゃないという現在だけをオレに突きつけて。



決して騙されてはくれなかった。



弥生は・・・オレがオレのすべてで愛した弥生は、
5年前の今日。

死んだ。




オレを現実に置き去りのまま。



第1話





オレが付き合うと言ったその女は、最近上忍になったばかりの忍で歳はそんなに変わらなかった。

サンだっけ?これからよろしくね。」

オレはちゃんと笑えているだろうか。


「はい、はたけ上忍。こちらこそよろしくお願いします。」

「あのさ、オレら恋人同士なんだしその呼び方はないんじゃない?」

「・・・では、カカシさんとお呼びしても?」


そう言って恥ずかしそうにしている顔は、少しはかわいいかもしれないと思ったけど
でも、それもやっぱり気のせいかもしれない。

「もちろん。」

「あ、では私これから任務ですので。」

「ん、いってらっしゃい。気をつけてねー。」
別れた後も、オレはその場から動けなかった。



弥生。


慰霊碑に刻まれた愛しい名前を指でなぞるそれは。
弥生がこの世に存在しないことを再認識させるためのものでしかない。

どうしてこんなことになったんだ。
オレはもう弥生しか愛さないと、あいつの死に顔に誓ったんだ。



守ってやれなかった、せめてもの償いに。


弥生は、女だからといって守られたいとは思わないと言った。
忍であるからには、自分だって愛する人を守りたいと。
じゃあオレらはお互いにお互いを守ると約束した。

2人は1つだね。とはにかむように言った弥生を見て、
それなら初めからオレら1つならよかったのにね。とオレは言った。


1つで生まれてこなかったオレらは残された側が辛くないように、
先に逝く側が寂しくないように、生前お互いに誓った。



先に死んだ方が相手の心を持っていく。


その時オレは覚悟した。
相方がいない人生を弥生におくらせる訳にはいかないと。


そのためにオレは、一分でも一秒でも弥生より長く生きようと。



そうして弥生は、オレの心を連れてあの世へと旅立った。





その日からオレとの付き合いは始まった。
任務がはやく終わればメシに行き、オフの日は大抵の部屋でなんとなくすごした。
お互い上忍でいつ任務がはいるかわからないこともあって、ほとんどどこかに出かける事はなかった。

そんなオレらの様子は端から見れば、仲むつまじい恋人同士に見えただろう。


ただ少しの違和感を残して。


「カカシさん。」


「あぁ、お帰り。」
ただいまもどりました。と言って部屋にはいるなりは下を向いたままその場から動かなかった。


「どうしたの?」
オレの声にはっとしたは、何でもないですと言って風呂に行った。



オレはに一切触れられなかった。
もちろん、に触れられるのも身体は拒否をした。

初めてに触れられた時、オレは胃の中のものをすべて吐き出すはめになった。
そんなオレの背中をさすってやることさえには出来なかった。

寝る時も別々に寝たし、いい大人にもかかわらず身体を重ねたことも手を繋いだことも、



お疲れ様といって肩に手をのせて相手をねぎらうことさえ1度もない。



そんなオレにうんざりすることもないは、その事実を知った後も変わらず笑顔を向けてくれる。



の笑顔が温かく感じる反面、どうしてそこまでしてオレなんだろうと思った。




上忍待機所で1人イチャパラを眺めているとき、
文字を目で追っていても、まったく頭に入っていないことをその人は知ってか知らずか声をかけてきた人がいた。



「ちょっと、顔かしてよね。」

目の前にたったその人は、忍の中でも美人で有名で。
まぁ、だからといって特別な関係があるわけでもなかったが。



とりあえず、話があるというのでカカシは黙ってしたがうことにした。


「なーに、紅?こんな人気のないところに連れてきて。オレ、ドキドキしちゃうじゃない。」

オレの冗談も今はイライラした様子を煽るだけだったようだ。


「そういうのやめて。今は私、真面目な話をしにきたの。」

「なーによ。そんな怖い顔しちゃって。キレイな顔がだいなしよ?」


「アンタ、と付き合い始めたんですって?」




「・・・あぁ。」


いつか紅にこうして問い詰められるような気がしていたため、
なんとなく避けていたのに。


さすがにもう、限界だったかな。


「で?真面目な話ってそれ?」

「今すぐ別れて。」


「なんで紅にそんなこと言われなきゃいけないワケ?」

は私の後輩なの。・・・アンタまだ、弥生のこと引きずってるのに。あの子を不幸にする気?」


紅がこう言うのもなんとなくうなずける気はする。
弥生は、


弥生は紅の親友とも呼べる存在だった。



「そんなつもりはぜーんぜんないけど?」

が今のアンタといて幸せになれるって、カカシ本当にそう思ってるの?」


「・・・・・。」


「そもそもなんであの子と付き合う気になったのよ。今までどんな女に迫られても見向きもしなかったくせに。」

「それは、」



が弥生に似てるから?」



「似てない、サンは全然弥生に似てないよ。」

「・・・でも最初は少し思ったんでしょ。」


「少しはね、そりゃー初めて見たときはオレも驚いたけどさ。
 でもサンは弥生とは違う。一緒にいればいるほど、弥生とは違うって思うよ。」


はアンタだけずっと見てきたの。アンタが弥生しか見てないって知ってても。
 ・・・今でもアンタが誰かと自分を重ねてるかもしれないって思っても。それでもあの子はアンタが・・・カカシだけをずっと好きなのよ。」


最後の方は、紅の悲痛な叫びにも似た気持ちが言葉の端々に伝わってきた気がした。


「じゃあ、そうすればいいワケ?サンはオレがスキなんでしょ?だからオレと付き合ってる。だったらそれでいいじゃない。」

「よくない!良いわけないでしょう!」

「紅?」


「アンタ、それでの気持ち受け止めてる気でいるつもりなの?ふざけないでよ。は真剣にアンタが好きなの。
 カカシ、アンタはそんなとちゃんと向き合ったことある?に弥生を重ねているんでしょう?
 弥生が・・・弥生がどんな気持ちであんなこと言ったか、アンタちゃんとわかってんの?!」



「紅。」


急にカカシの紅を見る目つきが変わった。
彼の周りだけ温度が低い気もする。



「オマエに弥生のなにがわかんのよ。」


紅はそう言うカカシに負けずに睨みつける。
は・・・弥生も。なんでこんな男に惚れたのよ。」


「ほっといてよ。」


「カカシ、」

「なに。」





「アンタいい加減、今を生きなさいよ。」





「それが出来ないなら、を手放して。手遅れになる前に。」


「手遅れってなによ。」

「今のアンタじゃ、を傷つけるだけだって。自分でもわかってるんでしょう?」


カカシはそっと息をはいた。


「うん、まぁ・・・ね。」

「だったら、」

「でもね、紅。・・・サンの隣はなんていうか、少しづつだけど居心地がいいんだ。」



「え?」


「今のオレが彼女をそばに置いてても、傷つけるだけだってのもちゃんと判ってる。
 こんなの・・・まともな関係じゃないって思うよ。でも、でもさ。」

「なによ。」


なんとなく、カカシの雰囲気が少しだけ和らいだ。


「帰らなきゃって思うんだ。弥生が死んでから自分なんてどーでもいい、いつ死んでもかまわないって思ってたけど。
 サンの笑顔を見るとね。あぁ、ここにまたちゃんと戻ってこなくちゃって、最近思うのよ。」

「アンタ・・・・。」

信じられない、という目で紅は目の前の男を、驚きで大きく見開いた瞳で見つめていた。


「なんでかね。」

それって、少しずつに惹かれてるってことじゃない。と口に出かかったが、
カカシ自身がきちんと向き合って解決しなくてはならない事でもあると思い直し紅は開きかけた口を閉じた。



「そんなの、自分で考えなさい。」

「紅はキビシーね。」

「当たり前でしょ。最初にも言ったけど、はかわいい後輩なの。
 おせっかい上等、不幸になるのがわかってて見過ごせるものですか。」

「ひどい言われよう。」

「当然よ、アンタみたいなの。他の女たちもこんな男のどこがいいんだか、さっぱりわかんないわ。」

「あらま、そこまで言っちゃう?」

「言うわよ。」

「くくく、たしか弥生と付き合いだした頃にもこうして紅に呼び出されたんだよねー。」

すでにカカシはいつものひょうひょうとした雰囲気に戻っていた。

「だって、弥生は大切な親友なのに。アンタなんかの毒牙にかかるから。聞いたときは幻術にでもかけられてるのかと思ったくらいよ。」



「・・・オマエねぇ。」

「冗談よ。とにかく、に関しては私は反対だから。」

「肝に銘じておきマス。」

じゃあ、といって立ち去る姿はなんともしなやかで美しく、アスマがメロメロなのもわかるなーと思いながらも
カカシは頭の隅では別のことを考えていた。





その日は、久しぶりにお互いのオフが重なったのでたまには、と珍しく2人での家で飲んでいた。

「どーぞ。」


「あ、ありがとうございます。」
準備したお酒を、カカシはに先についでやりそれから自分にもついだ。


「ん、この酒結構うまいね。」

「お口にあったみたいでよかったです。」

2人が飲んでいるのは、が波の国に任務で行った際に、お礼も兼ねて依頼人から頂いたものだった。

「でも、よかったの?サンの頂き物、オレも飲んじゃって。」

「もちろんです。私1人じゃとても飲みきれませんから。それに・・・・」


『これね、夫婦酒っていって夫婦円満を願って作られてるもんなんだ。
 波の国ではちょっとした名物なんだよ。アンタも大切な人と飲みな。』
そう言って依頼人のおじさんは、大切そうにに手渡してくれた。


大切な人って・・・私にはカカシさんしかいないし///



「???」
心なしかほんのり顔が赤くなって下を向いているを不思議に思ったが、
酔ったのかな?というくらいにしか思わなかった。



「あっ、あの。」

「なーに?」

「前からずっと聞きたかったんですけど。」

「うん?」



「カカシさんはどうして私と付き合おうと思ったんですか?」

「・・・・・。」


「あ、いやあの、答えたくなかったら別に構わないんですけど・・・・ちょっと知りたいなーなんて・・・思いまして。」


「じゃあさ、サンはどうしてオレみたいなのをスキになったの?」

「え?」

質問を質問で返されてしまった・・・。
まぁ、でも知りたい事は自分からっていうしね。

それをいうなら、名乗る時は自分から、である。


「えっと・・・・少し長くなるんですけど。私とカカシさん、幼い頃に1度会ったことがあるんです。」



「・・・そうなの?」
カカシは全く覚えていない。

「あ、カカシさんが覚えてないのも無理ないです。私が8歳の時なんで。」


ってことはオレが11の時か・・・。


「私の両親は忍だったんです。それで、ある日同じ木の葉の仲間だった人たちに家が襲われました。」

「あ・・・。」

「思い出しました?私、曳地(ひきち)コンビの娘なんです。」





そういえば、オレが11歳の頃にある有名な忍の夫婦がいた。
二人は里でも屈指の忍で、曳地コンビと呼ばれ、火影も一目置く存在だった。

ところがある日事件が起きた。


2人にある疑いがかけられたのだ。
任務で持ち帰ったはずの情報がぱったりともう1人の仲間から消えている、という不可解な事が起こった。
勿論その夫婦は情報を持ち帰っていたため、何らかの理由によりこの2人が、もう1人の仲間の脳内から情報を消したと推測された。

当然、周りの人間は何かしらの理由があるのだろうと2人を追及したが、どちらも口を固く結んだまま何も語らなかった。



そのうちに、2人がその情報を里に持ち帰る前に誰かに流したのではないかという噂が流れた。
仲間の1人が、情報を持ち帰ろうと里に向かおうとした時に一度気を失ったと言ったからだ。
その後から里に着くまでの記憶がすっぽり抜けている、と。

2人は裏切り者として周りからあからさまではないにしろ、里の忍たちから迫害を受けた。



その後、曳地コンビはその時一緒に任務を行った仲間に在宅中に襲われた。
3人ともその事件で亡くなってしまったため、事実を知る者は誰もいなくなり事件に関してはうやむやになってしまった、というわけだ。



「あの時の・・・?」

「そうです。今の私がいるのはカカシさんのおかげなんですよ。」



当時、2人には1人の娘がいた。
当然家が襲われた時もその子は一緒にいたわけで、
カカシが火影の命により曳地家に向かった時、燃え上がる家の中で両親の亡骸の前で1人泣いている少女がいた。

カカシは無我夢中でその女の子を安全な場所へと連れていったのだ。


「きっと私だけが知っている事なんですけど、実際父も母も里を裏切ってなんかいなかったんですよ。」

「2人から聞いたの?」

「いいえ、家を襲った仲間の人が私に言ったんです。」



ことの真相はこうだ。

本当に里を裏切ったのは、仲間の方だった。
情報を里外にもらそうとした仲間をの両親はなんとかとめようとした。

しかし、どうにも説得出来ずに最後の手段として仲間を気絶させ、丸ごと記憶を消したというわけだ。

仲間だったその人が、の家を襲ったのも自分の裏切りが露見するのを恐れてやった事だという。



「両親を殺した後、どうせ私も殺すからって最後に教えてくれたんです。結局その人は死んじゃって私はこうして生きてますけど。」


「・・・・。」
カカシは下手な慰めの言葉をかけるよりは、黙っていたほうがよいだろうと判断した。


「ここからは私の推測ですけど、その仲間だった人、父と母を引き合わせた人だったんです。きっとどうしても裏切られたって信じたくなかったんでしょうね。」

「そっか。オレもサンのご両親には何度か会った事があるけど、2人が里を裏切るような人じゃないってのはオレも思ってたし
 火影様は時々言ってたよ、きっとなにかあるんだろうって。火影様は最後まで2人を信じてた。」



「そうですか。ならきっと2人も報われますよね。」

「そーだね。」


「カカシさん?」

「ん?」




「覚えてます?あの時カカシさんが私に言った事。」


「あぁ、それは今でもはっきりと覚えてるよ。」



泣きじゃくるその子はカカシが連れていこうとすると、最早息をしなくなった父と母のそばでこう言ったのだ。



『私もお父さんとお母さんの所に行く。』


その時カカシは自分の父の亡骸を見つけた時の事がフラッシュバックするのを感じた。


『キミは生きなきゃダメだ。』

『ほっといてよ!!あなたに何がわかるのよ!!お父さんもお母さんも死んじゃった。私1人で生きてくなんて出来ないよ!』



パシンッ。


その場に乾いた音が響いた。
唖然として右の頬を押さえる女の子を、カカシは抱きかかえて今にも崩れそうな室内から脱出した。


「私、あの時カカシさんにああ言って貰えなかったらきっと2人の後を追ってたと思います。」



『アンタだけが不幸だと思わないでよ。』

『えっ・・・?』

『今の時代、両親がいない子どもなんて山ほどいるんだ。せっかく助かった命なんだし、ラッキーだと思って2人の分も生きたら?
 少なくともあの2人はアンタにも死んで欲しいなんて思ってないと思うけど?』



『・・・・・うん。』

後々、は助けてくれた少年がはたけカカシという自分と対してかわらない歳の上忍だという事、
彼の写輪眼にまつわる親友との出来事、そして彼の父である白い牙の事を知った。


「初めは頭にきたんですけど・・・カカシさんの事知って、自分が恥ずかしくなりました。」

「ま、あん時のオレもかーなり生意気だったからね。」

「いえ、自分も強くならなきゃって思いました。カカシさんみたいに、しっかり自分の足で立てる人間になろうって。」

「それで忍に?」

「はい。それから、カカシさんが私の目標でした。いつか、カカシさんに追いついたら私はちゃんと生きてますって、言うつもりでした。」

「なんで今まで黙ってたの?名字まで変えて。」

「名字はあの後、両親の知り合いに引き取られたから。その人のなんです。黙っていたのは・・・・」




「追いつきたいって・・・カカシさんは私の目標だったのに。いつの間にかただ会って話がしたいと思うようになりました。
 今の自分を見たら彼はなんて言うだろう?私のことなんてもう忘れてしまったかな?って、そんなことばかり思うようになりました。」



「???」
今一つの言わんとしている事がつかめない。



「賭けだったんです。あの日、私がカカシさんに告白した日。気づいてくれたら、今までのこと話そうって決めてました。
 それに卑怯だとも思ったんです。とっくの昔の話を引き合いにだしてあの頃からいつのまにか好きになってました、なんて。」


「ゴメン。」

「いえ!カカシさんが謝ることじゃないです!!気づかないのも無理はないですから。それに・・・」


「ん?」


「てっきり振られるもんだと思ってました。その・・・・カカシさんが誰とも付き合わないって有名でしたから。」


「あー知ってるの?」


「はい、弥生さん・・・とおっしゃるんですよね。」


「うん。」



急に私を見ているカカシさんの表情がどこか遠くを見るような、
まるで私を通して誰かを思い出しているような、そんな目に変わった。



「オレは・・・・サンが思ってるような人間じゃないよ。」

「そんな、」

「そうなんだよ。サンが思ってるほど強くない。
 あの時、あんな事言っといてなんだけど・・・弥生がいたから生きてこられた。弥生がずっとオレを支えてくれたからここまでこれたんだ。
 ・・・・ゴメン、サンにするような話じゃないよな。」

「いえ、いいんです。弥生さんの事は知ってました。」


「カカシさんが・・・時々私を通して誰かを見ているんじゃないかって・・・・思ってました。それが弥生さんだって知ったのは最近なんですけどね。」


のその言葉にカカシははっとした。
「だったら・・・・どうして?」


「いいんです。それでも、私カカシさんの側においてくれるなら構いません。」

「もったいないよ。サンにはオレなんかよりも、もっと似合う男がいっぱいいるよ。」



「カカシさんの支えが弥生さんだったように・・・・・私の支えはあの時からずっとカカシさんだったんです。」


サン・・・」


「だから・・・・だから、今さら別れるなんて言わないでくださいね。」
そう笑った顔は明らかに無理やり作ったものだった。


そこまでして自分を思ってくれていると知り少し愛しく感じて、思わず抱きしめたくなった。


この時ばかりは彼女に触れられない事がもどかしく思った。



なあ、弥生。
あの時の約束をちゃんと守れないこんな中途半端なオレを、
お前はそっちで見ててどう思う?










今回は、いつものテイストとはちょっと違うダークな感じのお話です。
でも最後にはきちんとハッピーエンドで終わるので、心配しないでくださいねv

さて、当サイト始まって以来初のカカシ先生の誕生日なので、ワタクシ気合が入っております!